スピード違反の取り締まり方法には、オービスを使う自動取り締まりのほかに、パトカーで違反車を追いかける「追尾式」、そして通称「ネズミ捕り」といわれる道路脇に速度測定装置を置いて取り締まる方式があります。このネズミ捕りに使われる速度測定装置はどのようにスピードを測るのか、取扱説明書から読み解くことにします。
ネズミ捕りの速度方式は3種類ある
ネズミ捕りによるスピード違反の取り締まりは、道路脇に速度測定装置を設置する必要があることから、警察内部では「定置式」と呼ばれています。ネズミ捕りで違反車のスピードを測定する方式は、現在「レーダー式」「レーザー式」「光電管式」の3種類です。
レーダー式は、自動車に向けて電波を送信し、反射して戻って来た電波の波長と元電波の波長差から自動車のスピードを割り出します。送信電波には伝統的に10.5GHz帯を利用してきましたが、最近では18~26GHz帯を使用するモデルも登場。とはいえ、現在も圧倒的に台数が多いのは10.5GHz帯タイプです。
10.5GHz帯タイプには、かつては松下通信工業製や三菱電機製も盛んに利用されていましたが、現在では日本無線製が圧倒的。現在使用される日本無線製のレーダー式速度測定装置は、古い順に「JMA-230」「JMA-240(A)」「JMA-280」の3モデルで、もっとも新しいJMA-280はJMA-240Aのマイナーチェンジ版です。
レーダー式ネズミ捕りでの測定ミス
JMA-280の取扱説明書によると、レーダー式の測定は車両の進行方向と平行近くにレーダーを発射して測定する「0度法」と、27度の角度をつけた「27度法」の2方法が存在します。0度法の場合の速度測定可能距離は約100m。0度法と27度法を比較した場合、スピード測定値は27度法は低く出るため、その際にはプラス補正を行う仕組みです。
このため、0度法で測定するように設置したにもかかわらず、27度法のプラス補正を加えてしまうと実際のスピードより高い測定結果となり、スピード違反でないのに取り締まられるというケースが発生。実際、過去にレーダー式での測定ミスが発覚した多くはこのパターンでした。
また、光電管式のスピード違反取り締まりでは、道路を横切るように光電管の送受光部と反射板のセットを2組設置。それぞれを前輪タイヤが遮った時間差と、2組の設置間隔からスピードを割り出します。光電管式の測定装置も、現在は日本無線製がほとんどで、「JMA-340」「JMA-380」の2モデルが使用されています。
光電管式ネズミ捕りに誤測定の可能性
JMA-380はJMA-340のマイナーチェンジ版で、2017年頃から登場。JMA-380とJMA-340に外見上の違いは少ないものの、JMA-380にはJMA-340にはなかった送受光器の取手が追加されています。また、ユニットボックスは高さが低くなり、幅が広く安定感が増しています。
JMA-380の取扱説明書を見ると、「タイヤが光路を遮断することを前提に設計」「タイヤ以外の部位が光路を遮断することは極力避ける」との記載があります。また、光電式の光路は道路面から9cm以下にセットとあり「道路面から9cm」の部分にはアンダーラインが引かれていました。
じつはこの9cmという高さは重要で、車検の基準となる保安基準の最低地上高が9cmなのです。しかし、樹脂製のフロントスポイラーには例外があり、地上高5cmでも車検を通すことが可能。光電管式の速度測定器を地上高9cmに設置した場合、低いフロントスポイラーの自動車では実際より速く誤測定される可能性があります。