オービスの速度違反が赤切符だけ取り締まる理由
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高速道路や幹線道路に設置され、速度違反のクルマを撮影して取り締まる「オービス」は、違反の程度が大きい、いわゆる赤切符だけを取り締まるといわれています。その理由として、あまり多く取り締まると警察側が対応できないなどの説がありますが、実は警察がオービスで青切符の速度違反を取り締まれない理由があるのでした。

オービスの速度違反は赤切符限定

警察がオービスで取り締まる速度違反は、略式を含む裁判が必要な赤切符に該当する違反に限られるといわれています。速度違反が反則金で済む青切符ではなく赤切符で取り締まられるのは、一般道であれば30km/h以上、高速道路については40km/h以上が相当します。

オービスによる取り締まりが赤切符限定の理由としては、フィルム式カメラであれば撮影フィルムに限りがある、あるいは後日呼び出してキップを切るのに手間がかかるといった物理的な理由も考えられます。しかし、より決定的なのは肖像権に関する問題で、むやみに警察は人物を勝手に撮影できないのです。

警察が行う撮影に関しては「京都府学連事件」と呼ばれた事件で肖像権を巡る争いがありました。この事件は、1962年3月に京都市で行われた学生運動のデモについて、警察官が無断でデモ隊を撮影。抗議して警察官を突き飛ばした参加者が、公務執行妨害で逮捕されたものです。

京都府学連事件で、起訴後の裁判で争点のひとつになったのが、警察官は職務上であれば相手に無断で人物を撮影してもよいのかということでした。結局、裁判は最高裁大法廷まで持ち込まれ、1969年12月24日に最高裁大法廷が出した判決は、争われた撮影については適法だったと認定しています。

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オービスの速度違反が赤切符だけの理由

ただし、警察官が人物撮影を行えるのは「その撮影が一般的に許容される限度をこえない相当な方法をもつて行なわれるときである」という条件も付いた判決だったのです。オービスも警察による人物撮影にあたり、無制限に取り締まれないことになります。

過去にオービスに関する裁判で、肖像権に関して争われたケースでは、1980年1月14日に東京簡易裁判所が出した判決があります。判決では先ほどの最高裁判例を引用しつつ「設置場所にもよるが、制限速度を多少超えた程度にセットして写真撮影することは相当ではないものと言わなければならない」としています。

速度違反に限らず、青切符で済む違反は反則金を支払えば裁判は行われない、いわば軽微な違反とも考えられます。そのため、青切符のスピード違反をオービスで取り締まると、先ほどの判例から取り締まり自体が無効と判断される可能性があり、オービスの取り締まりは赤切符限定となっているのです。

しかし、この原則も可搬式オービスでは崩れつつあり、青切符の速度違反で取り締まられるケースも登場しています。現在、青切符で可搬式オービスが取り締まるのは制限速度30km/hの生活道路に限られ、50km/hの走行でも十分に危険です。

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