
ことわざに「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」がありますが、まさにこれは日本人の特徴そのもの。日本人は「世界で一番失敗を嫌う」民族といわれることもあります。この日本人の特性は、じつは遺伝子レベルで組み込まれていることなのです。羹に懲りて膾を吹くメカニズムを詳しく見ていきましょう。
羹に懲りて膾を吹くとは無意味な心配
「羹に懲りて膾を吹く」ということわざは、ある失敗に懲りて必要以上に用心深くなり無意味な心配をすることのたとえです。熱い汁ものを食べて懲りたので、生肉の刺身を食べるときも息を吹きかけて冷まそうとする様子を意味します。失敗することを避けようとする日本人の特性を、よく表していることわざかもしれません。
そんな失敗を避ける特性と密接に関わるのがドーパミンです。ドーパミンとは快感や幸福感に関与する神経伝達物質。そして、ドーパミンと結合して脳に情報を伝えるのがドーパミンレセプターです。
このドーパミンレセプターの機能によって脳の満足スイッチの入りやすさが変わります。レセプターの機能が高い人というのは、少しのドーパミンで満足スイッチが入るということです。
一方でレセプターの機能が低い人は、たくさんのドーパミンがないと満足スイッチが入りません。どんどん新しい刺激を求めたりリスクをとったりと、チャレンジをしないと満足できない脳になっています。
羹に懲りて膾を吹く用心深さの遺伝子
このドーパミンレセプターの機能というのは、遺伝子レベルで組み込まれているもの。じつはそれが国民性となって現れます。もちろん、日本人の特徴もその影響から逃れられません。
満足を感じにくい人の割合を世界的に見てみると、南米は40%ほどとほかの地域に比べて高い数値となっています。満足を感じにくいということは、それだけリスクを好む民族ということです。
一方で、アジアでは満足を感じにくい人の割合は10%以下。なかでも、日本人には満足を感じにくい人は1%未満しかいません。日本人はリスクを好まない民族といえるでしょう。
リスクを避けるということは失敗を避けるようにして、すぐに満足しようとする傾向になります。羹に懲りて膾を吹くような用心深さは、日本人の遺伝子に組み込まれているのでした。